「激情24」
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合肥についた月曜日の夜、さっそく黄河賞の授賞式があった。
黄河賞というのは、優れた公共広告におくられる賞である。それ以外の広告に与えられるのは長城賞である。こちらの授賞式は木曜日、最後の日に行われることになっている。
黄河賞の表彰式は、タクシーで10キロほど走った街の中の劇場で行われた。ちゃんと人の暮らしのにおいのする街があったんだ。少し安心した。
1000人以上入ろうかという大きな劇場に、若者たちがぞくぞくと入ってくる。なぜか子供づれの家族もいた。テレビカメラが何台もある。特番として中継するらしい。
常夜灯が消え、ステージに音楽が鳴り響いた。スポットライトがついて司会者が現れる。
開会が宣言され、偉いおじさんが挨拶し、そして再びステージは暗くなった。
前奏が始まった。
袖から歌手が登場して、歌を始めた。歌い終わると拍手に送られて退場した。すると、また違う前奏が始まって、別の歌手が登場してきた。
「ずいぶんショーアップするんだねえ・・・」私たち日本から来た一行は鷹揚に微笑んでそれを見守った。
歌が終わると、やっと一組目の表彰式が始まった。
クリエーターたちが舞台の上で手を振り、トロフィーを受け取り、審査員と握手する。お決まりの風景だ。
驚いたのはこの後だ。
また照明が落ちて、前奏がはじまって、またべつな歌手がステップを踏みながら現れてきた。今度はバックダンサーつきだ。
この歌手は二曲歌って、悠然と去った。と入れ替わりに次の歌手が登場してきた。こちらもたっぷり、ろうろうと二曲歌ってくれた。
このようにして。
10数組ものアーチストが入れ替わり立ち替わりステージに上がって歌をたっぷりと聴かしてくれたのである。
演歌あり、デュエット歌謡あり、民族音楽あり、京劇あり、フォークあり、アイドル歌手あり、オペラのテノールあり、北島三郎あり、田中星児あり、水前寺清子あり、もうなんでもあり。
授賞式か、歌謡ショーか。
栄誉かエンターテインメントか。
どっちが主食でどっちがおかずか、だんだんわからなくなってきた。
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先週の月曜日から金曜日まで、中国の合肥へ行ってきた。
ゴウヒと読む。安徽省の省都である。(安徽省は、アンキショウと読む。)あんまりなじみがない。行く前にインターネットで調べてみたが、紀元3世紀に「合肥の戦い」というのがあった。以上。それ以後はほとんど歴史に登場しない。あまりパッとしない街であるようだ。
上海から飛行機できっかり1時間で着いた。
空港からホテルまで、片側4車線はある、定規で引いたようなまっすぐな道を走る。道の両側は荒涼としている。ところどころ近代的な化学工場といった趣の建物が見られる。
人の暮らしの気配が見られない。
片側4車線の広い道路に沿って、ぽつんと自分の泊まるホテルが現れた。
ホテルの前は広大な空き地だ。
区画整理がされ、道路が作られ、さてこれから、という風景だ。
ここで5日間を過ごすのだ。
いやじゃー。私は人がゴミゴミ暮らす街が好きなんだ。夜ホテルを出て一人でほっつき歩けるような所が好きなんだ。朝は屋台で豆乳を食べたりしたいんだ。しかしそういう望みはすべて捨てなければならないようであった。
この街で「第15回中国広告祭」が行われる。
去年は青島(チンタオ)で行われたそうだ。一回一回、広い中国の各都市を持ち回りで開催地とするのである。
中国の全土から、海外からも、広告人たちがこの街にぞくぞくと集まってきた。
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散髪屋で髪を切ってもらっていると、突然男(30才くらい)が飛び込んできた。
「すぐできますかっ?」
尋常でなかったのは、その男があまりにも激しく息を切らしていたことである。
ここまでおそらく全力疾走して来たに違いない。店中に響き渡るハアハアという息の音。
「バリカンでお願いしたいんでっ!」
散髪屋の親父さんは男を椅子に座らせると、おしぼりを渡してまず顔の汗を拭かせた。
「どれぐらい切りますか?」
「全部」
「というと坊主で?長さは?」
「一番短いので」
「青くなりますよ」
「青くなっていいです」
後は店員も客もみな無言である。
バリカンの音だけが店内に響いていた。
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日本のりんごの65%は青森県で生産されるそうだ。
そのうち85%は、岩木山の南麓で作られているそうだ。
65%と85%は反対かもしれない。この話はタクシーの運転手さんに聞いた受け売りである。
岩木山の南麓だけが 約束の地。日本で唯一つりんごの栽培に適した場所なのである。
高度、温度、風向きその他、ここはすべての条件が満たされた奇跡の場所なのだ。
岩木山が、冷たい冬の北西風を遮ってりんごを守っているんである。
あとは忘れた。
しかし、問題は、今この時期こそ、りんごのたわわに実った収穫期だということである。道の両側、あっちこっちにりんご畑。りんごってピンクなんですね。かわいい。ぼんやり眺めていて、ちっとも飽きない。
写真撮るの忘れた。見せられないのが残念だ。
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金木の町の空気はひんやりとしている。近くに製材所でもあるのだろうか、木のチップを燃やしたような煙のにおいがする。この空気の冷たさと煤くささはスコットランドの蒸留所の町に似ていると思った。
金木は、太宰治の記念館のある、津軽鉄道沿線ではたぶんいちばん有名な観光地である。しかし、そんなうかれたようなところはなく、思ったよりも荒涼としているので驚いた。
ここで昼飯を食おうと思っていた私は完全にあてがはずれた。
雨で濡れた通りには、店など見あたらなかった。あっても閉じられていた。
きょろきょろ探して歩いているうちに、あっというまに太宰治の生家である記念館に辿り着いてしまった。
隣に食堂があった。ハンバーグ定食と看板に書いてある。ちょっと躊躇したが、中へ入った。
鍋焼きうどんがあったので、それとビールを頼んだ。
食べ終わる頃、お店の奥さん(美人)が「お客さんどこから?」と話しかけてくれた。
東京から、と答えると、「いそがしくてたいへんなんでしょう」といたわるように言った。私はそうとう疲れているように見えたようだ。
奥さんは周辺のお寺など見るべき所を教えてくれ、「なんも忘れてのんびり見て回るといいよ」と言ってくれた。
話しているうちに、この食堂は、太宰治の生家の隣家である古い大きな旅館の一角にあって、その建物は国から文化財の指定を受けている家であることがわかった。太宰治の生家は建ってから100年、この家は75年である。
「見ていく?」
お言葉に甘えて厨房の奥から靴を脱いで母屋に上がった。
部屋を一つ一つ見せてもらった。
家宝とおぼしき書画骨董まで見せてくれた。
戦前のことである。若き政治家や軍人たちが津軽の地にやってきてこの旅館で会合を持った。何を話し合ったかはわからない。
そのときに残していった寄せ書きがあった。中に鳩山一郎という名前があった。
玄関で奥さんの写真を撮らせてもらった。
照れながら、ポーズをとってくれた。
「また来ます。」
「がんばってね」
太宰治記念館に行く前に、いいものを見せてもらった。
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先週の金曜日の話なのだけど、「ラフカット2008」という演劇公演を見てきた。
これは4つの短い劇からなる公演だ。4つの話はすべて作者が異なり、映画や演劇やCMで活躍している気鋭の作家たちが書き下ろしたもの。役者はすべてオーディションで選ばれた人たちだ。
それだけ聞いても、舞台の上がいかに意欲的でエネルギーにあふれているか想像がつきそうだ。
結果は想像以上だった。
4つの作品はどれもほんとにおもしろかった。オカマを主人公にした第4話「愛のメモリー」は「ヘドウィグ・アンド・アングリー・6インチ」をちょっと思い起こさせた。役者たちの肉と肉がぶつかるべちゃんという音が聞こえる。オカマの話は舞台がおもしろい。
芝居をみた後、歌舞伎町のスナック「蔵人」へ行った。
美樹ちゃんが、ラフカットには友だちがときどき出演したりするのでたまに見に行く、と言っていた。
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